おつりの計算


 こんな事は今更ここで紹介するまでもない話だが、 アメリカ人は計算が苦手である。 しかも、それを自覚していない。 計算が苦手である事自体は、さほど問題ではない。 問題なのは、それを自覚していないという事である。 ここで、もう帰国してしまう 山本 氏の話を紹介する。

 あれは、私がこちらに来て 2 週間位した時期であった。 映画 Armageddon を見に行こうという話になり、 たしか、山本氏、金城氏と私の 3 人で映画館に向かった。 行く途中で Burger King でテイクアウトしよう、 という事になったのだが、これが悪夢の始まりであった...

 山本氏は、日本のマックのバリューセットみたいなセットを注文した。 で、たしか値段は $4.33 とかだったと思う。 ここで、山本氏には選択肢が 3 つあった。

 A: $5 紙幣を出して、おつりをジャラジャラ受け取る
 B: $5 紙幣と 33 セントを出して、 $1 紙幣を受け取る
 C: $5 紙幣と 35 セント出して、 $1 紙幣とペニーを 2 枚受け取る

言うまでもなく A が常に正解である。 B は店によっては不可だが、まともな店なら大抵は大丈夫。 C は「可能な店もあるかもしれないなぁ。でも恐いから試すのはやめよう」 というレベルである。 つまり、ハッキリ書けば、

C は不正解

である。 しかし、山本氏は 33 セントが無かったため、 つい C の選択をしてしまったのであった....

 ちなみに、その時の Burger King は、 Centre Avenue という通り沿いの店であるが、 この Centre Avenue が、一つの境界線になっているらしい。 何の境界線かはあえて書かないが、 私の家や Carnegie Mellon University の方からテクテク歩いて行くと、 Centre Avenue を越えたところからは妙に黒人が多い、 という事だけ書いておく。( 注 : 別に治安は悪くない。) そたがって、そこの Burger King の店員さんの計算能力も、 推して計るべしである。

 ここでどういう事態になったかというと、 店員さんは、 $5.35 を受け取って、レジに入れた。 ところが、レジに金を入れた後でオツリを考え始めて、 そのまま混乱してしまったのである。 もちろん、何も考えずにレジを打てば、 機械が計算しておつりを表示してくれるはずである。 が、一瞬でメモリがオーバーフローしてしまったらしく、 うろたえていたと思ったら、 突然、偉いオバチャンを呼びに行ってしまった。 オバチャンは、当然カンカンに怒っている。 で、「いくら受け取ったのか ? 」とかいう議論をしている。 さすがに山本氏も焦って、 「 $4.33 に、俺は $5.35 出したんだから、 おつりは $1.02 でしょ ? $1.02 ちょーだい」 と弱気に言ってみた。 ところが、オバチャンは聞く耳を持たない。

 しばらく話した後で、オバチャンが、 「お前はいくら払ったんだ ? 」と聞いてきた。 山本氏、「 $5.35 、そこの店員に払ったよ」。 オバチャン、店員に確認。 渋々ながらに $1.02 のオツリを渡す。 と思いきや、 $1.00 しか無い。 山本氏「あれ ? $1.02 じゃないの ?」と聞いてみる。 オバチャン曰く、

「 2 セントは税金だ」

んなアホなー !! レジの機械は、税込で $4.33 って表示しとるっちゅーねん。 山本氏もさすがに「 2 セントなんか、いらねーよ」と思って、 そのまま「わかった」と引き下がった。

 その後、私が注文している間も、オバチャンは何かブツブツ言って、 山本氏の方をジーッと見ている。 明らかに、

ずる賢い日本人に金を搾取された

と思い込んでいる態度である。 しかし、冷静に考えると、山本氏は 2 セント搾取された上に、 疑惑の目で見られているという、なんとも理不尽な立場である。 ちなみに、レジの店員は反省の色無し(のように見える)。 他人事のような顔をしている(ように見える)。 黒人の表情を読みとるのは、日本人には難しいので、 実際は反省しているのかもしれないが、 多分、反省していないと思う。 その店員も「日本人のせいで怒られた」と思っているに違いない。

 さて、ここでこの出来事を振り返ると、 一体、どこが問題だったのだろうか ? 日本での常識で考えれば、

 1: レジの店員が計算できなかった
 2: レジの店員が計算をレジの機械に任せなかった
 3: オバチャンが、客を信用しなかった

辺りだろうが、アメリカという場所を考えると、ただ一つ、

 山本氏の金の出し方が悪い

という事だけが問題点である。 Centre Avenue の Burger King という事を考慮すれば、 先述の A B C で言えば B もアウトの可能性は十分あり得る。 そこで C を選択してしまった山本氏が悪いのであった。 ということで、皆さんもアメリカに来た時には、 おつりをジャラジャラ貰うように心がけていただきたい。
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